第23回ヘルスキーパーセミナー

工藤正一様の写真 フロアの様子の写真


 午前中の総会の後、昼食・休憩を挟んで、午後1時30分からセミナーが始まりました。
開会式では来賓として、厚生労働省職業安定局 高齢・障害者雇用対策部 障害者雇用対策課 障害者雇用専門官 工藤正一様がおいでくださり、ヘルスキーパーセミナーの成果への期待、厚生労働省が進めている障害者雇用対策の取り組みについて話され、協会の益々の発展に向けてのお言葉で締めくくられました。
お忙しい中、どうもありがとうございました。


伊藤和之先生の写真 模擬面接の様子


 続いてセミナー(講演1)として、国立身体障害者リハビリテーションセンター理療教育部厚生労働教官 伊藤和之先生を講師としてお招きし、「医療面接」というテーマで、途中ビデオ教材を使いながら、90分のご講演をいただきました。
 最初に医療面接の目的について次のような説明がありました。
医療面接は問診を確認し、それを進化させたものであること。
つまり、疾病に対してアプローチしていくのが問診であり、医療面接はそれを確認し、疾病と病苦(身体的側面、精神心理的側面、社会的側面)にもアプローチし、全人的な医療の実現に資することを目的に行われること。
次に医療面接の役割について、
a.患者さんと良好な信頼関係を築くこと。
b.患者さんからの情報収集(問診)を適切に行うこと。
c.患者さんに説明や教育を行うことと述べられました。
a.が良くなれば良くなるほどコンプライアンス(医療者の助言を守ること)が高まること。
また、c.ではインフォームドコンセントを十分発展させていけば、患者教育と治療への動機付けが向上していくことも話されました。
 次に医療面接の必要な態度と技法について述べられました。
医療面接の成功の秘訣は傾聴が実現できるかどうかであること。
そのための無防衛、受容、共感、熱意、適当な距離間(相手の言葉を待つとき)の態度について、
また、成功を実現するための技法としての、促し、繰り返し(オウム返しをするのではなく、適当なところで少しタイミングをずらしながら大事な部分を繰り返す)、
そして要約と確認(患者さんだけでなく、術者にとっての確認も)について、要点をまとめられました。
 そして次に「鍼灸臨床における医療面接」のテキスト版から作成された「標準的な医療面接の実際」というビデオを放映してくださいました。
ここでは患者さんの解釈モデルを知ること(なぜそれが起こってきたのか、今どういう状況にあるのか、これからどうなっていくのか、どういう施術を受ければ自分は良くなっていくのか)という一連のまとまりのある考え方のこと、「病気エピソード」に注意しながら、ビデオを見ました。
 主訴に対する患者さんの解釈モデルと主訴が患者さんの心理的・社会的状況に及ぼしている影響を把握すること。
そして患者さんの現在の身体状況をレビューすること。
解釈モデルを伺い、術者がまとめた解釈モデルとすりあわせてお互いに共有していくことは、信頼関係を深めることに繋がること。
さらに患者さんの解釈モデルを知ることは患者さんをより良く理解することであり、さらに治療効果を高めるキーポイントになること。との解説がありました。
 また、身体からの傾聴、あえて触れることの重要性、触れることによって患者さんからのメッセージを受けとめられること、いわゆる非言語的コミュニケーションについて、私達ヘルスキーパーとしての特徴をいかして医療面接の中に組み入れ、有効なものにして行きましょうと、アドバイスをいただきました。
 最後に会場から模擬術者を募り、模擬患者(伊藤先生)とで、医療面接のデモンストレーションを行い終了となりました。

加藤会長の写真


 小休止を挟んでセミナー(講演2)に入りました。
ここでは「腰部の症状に対するヘルスキーパーの関わり方」というテーマで、本協会 会長 加藤武司氏より、参考資料に沿って60分の講演がありました。
はじめに、腰痛は男性では症状の訴えとしては一番多いこと、女性では肩凝りに次いで2番目に多いこと、
また平成7年の当時の労働省の調べでは職業性疾病の発生は9230人、うち5035人(55%)を災害性腰痛が占めていること。
また、職場における腰痛は特定の業種のみならず多くの業種、作業に見られること、と現況について述べられました。
次ぎに腰痛の発生の要因(動作要因、環境要因、個人的要因)の3点について説明があり、そして職場における腰痛予防対策について労働衛生面から説明がありました。
(1)作業管理では、作業の自動化・省力化を勧める。作業姿勢・動作に注意する。作業標準(作業方法、作業時間)の基準を作る。休憩設備を設ける。
(2)作業環境管理では、筋などの運動器の活動状態が良好になる適切な温度、転倒防止のための適切な照明および作業床面、不自然な作業姿勢、動作を避けるための作業空間、設備の配置等。
(3)健康管理ではまず、重量物取扱い作業、介護業務等腰部に著しい負担のかかる作業に常時従事する労働者に対しては、配置前および定期的(六ヶ月以内に1回)な医師による腰痛の健康診断を実施する。そして労働衛生教育では、作業前体操、腰痛予防体操、簡易コルセットなどの装着のアドバイスを行う。
特に労働衛生教育では、労働省の行政指導による腰痛予防対策の指針で「当該教育の講師としては、腰痛の予防について十分な知識と経験を有する者が適当である」とされており、「この分野は、私達ヘルスキーパーが関わることが出来るものであり、協会が行う研修事業の中で充実していけば、職場で集団、個人指導が可能となるであろう。」と述べられました。
 次に腰痛をおこす大きな柱としてVDT作業について述べられました。最初にVDT障害に関する背景説明として、平成10年旧労働省による技術革新と労働に関する実態調査で、VDT作業者のうち、精神的疲労を感じている人は36.3%、身体的疲労を感じている人は77.6%、腰の疲れ・痛みを感じている人は22%であったことが上げられました。これを基に平成14年に新しいVDT作業における労働衛生管理のためのガイドラインが発表されたこと。そしてVDT障害が多発し問題になった要因について次の様な説明がありました。旧ガイドラインが発表された昭和60年当時では、パソコンの出荷台数が年間200万台であったのに対し、現在では1300万台を越えており、VDT作業従事者も増加し5000万人と言われていること。大型ディスプレイが増加したこと(上方視、画面が眼の高さより高くなりドライアイになりやすい)、多彩なソフトウェアの普及、マウス等入力機器の多様化、インターネットの普及、ノート型パソコンの普及(キーボードが小さく画面を動かす自由度か少ないことから、作業者の姿勢の方が拘束されてしまう)、携帯情報端末等の普及について述べられました。
 次にVDT障害の予防として、作業管理について話されました。最初にVDT作業区部について、(1)単純入力型、(2)拘束型(発注や照会をするようなコールセンター業務)、(3)対話型(自分の考えで文書、表、メール等を作る型)、(4)技術型(プログラミング、CADで図面等を作る型)、(5)監視型、(6)その他の型(携帯型情報端末)の説明があり、中でも(1)と(2)がVDT障害を起こしやすいこと。そしてそれぞれの作業時間に合わせて、区部A,B,Cに分けられて健康管理がなされていること。(1)と(2)は一日4時間以上で区部A(一番厳しい健康管理が必要)、(1)と(2)が一日2時間から4時間で、その他の物で4時間以上が区部B、(3)から(6)で2時間以上が区部Cとに分けられ作業時間、健康管理がなされていることの説明がありました。また、作業時間管理としては、一連続作業時間を1時間以内とし、作業と作業の間には10分から15分の作業休止時間を設ける。(これは休息時間ではなく、この時にアクティブレストとして、肩や腰などを伸ばしたりすると良い)また、一作業時間の中に1回から3回位、1分から2分の小休止をとると良いことも説明されました。次にVDT作業の腰痛予防のための姿勢については、なるべく腰掛けに深くかけけ、バックレストの角度は120度の位置で、適切な高さでアームレストがあるものが良く、眼とディスプレイとの距離は40センチ位離すのが良いこと。との説明がありました。
 そして、私達ヘルスキーパーが腰痛の症状ではどのような関わり方をすれば良いかについて、クライアントに対し、疾病の発症、起因に配慮しながら未病の段階における症状の改善を図る施術や助言を行うことで、生き生きと働ける健康を提供していこう。また、施術にあたっては適応するかどうかを問診、理学的検査により判断し、特に根症状のある場合、腰部の筋肉の緊張が強くて腰が曲げられない状態や、悪性腫瘍が疑われる場合には十分注意を払い、必要に応じて医療を受けることを薦めていき、その判断ができるだけの知識、技術を有していなければならないことを述べられました。最後に日頃の臨床においても、私達ヘルスキーパー(臨床家)として、知識、技術に加え、クライアント、企業側に接する上でのより良い態度が重要であることに触れられ、終了となりました。


戻る